風景画
風景が浮世絵の重要な分野になったのは19 世紀になってからのことであった。当時、日本では国内旅行ブームとなり、人々が周辺の風景に関心を持つようになったのである。日本の風景を広めたのは、北斎と広重のすばらしい風景版画シリーズである。新しい顔料プルシアンブルーのおかげで浮世絵師たちは空や海を鮮やかな色彩で表現できるようになった。
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天候と四季
広重は何千枚もの風景版画の図案を作成したが、似たような図柄はなく、それぞれ独特であった。変化をつけるために春や秋といった異なる季節、雨や雪など違う天候のもとでの風景が描写されている。
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ファン・ゴッホと日本の風景
ファン・ゴッホは自らの浮世絵コレクションに描きだされた日本の風景をこよなく愛した。なかでも数10枚の広重の版画に強く惹かれた。彼は浮世絵師たちのイメージを勝手に思い描き、自然の中で隠遁しどのように制作していたかを空想した。彼の手紙を読むと、ファン・ゴッホがフランスの風景をいかに「日本の眼鏡」で見ていたかがわかる。彼の油彩画やデッサンには花、雨、節くれだった木などの日本のモティーフが数多く描かれている。